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 Diary 2001・5月7日(MON.)

コブラ・ヴェルデ

 関西ドイツ文化センターにて行われている特集上映「ヘルツォークに狂う」中の一本、『コブラ・ヴェルデ』を観に行く。15 時 45 分から 600 円。本来なら 15 時から店をあけなくてはならないので、観にこられる訳がないのだが、ワダくんに無理を言って、15 時から 18 時まで私の代わりに店を任せたのだ。ワダくん有難う。私とトモコとショウヘイくんの三人で映画を堪能させていただきました。

 ところでヘルツォークといえば、私には複雑な思いがある。私が映画を意識的に観はじめた 80 年代の終わり頃、すでにヘルツォークはあまり話題になっていなかったが、どうにもイメージが悪かった。といっても個人的にイメージが悪かっただけで、支持している人達はまだたくさんいたと思う。

 正確にいうと、私がその頃面白いと思ってファンになりはじめていた映画評論家の人達、蓮實重彦や四方田犬彦などが、ケチョンケチョンにヘルツォークを貶していたのだ。83 年にもドイツ文化センターがヘルツォークの特集上映をしているのだが、その年の雑誌「映画芸術」のベスト & ワースト選考をみると、蓮實も四方田もワースト 1 に『フィッツカラルド』を選んでいる。

 ついでに両人のコメントを抜くと、蓮實は「印象として、愚にもつかぬ西ドイツ映画が公開されすぎたような気がする。ウェルナー・ヘルツォークその他の有象無象はイタリアのベロッキオの旧作一本の前にあえなく消滅する。」、四方田は「ヘルツォークのチャート式ドイツ映画早わかりに、どうして誰もがやすやすとダマされてしまうのか。」など。他にも梅本洋一が「ただしヘルツォークを好む人はアホだとしか思えない」と書いている。これではそもそもヘルツォークを観ようという気が起らない。そして、実際あまり観ていないのだ。私がちゃんと観たヘルツォークの映画は『ノスフェラトゥ』一本だけである。

 しかし、この『ノスフェラトゥ』はなかなか面白かったのだ。なにより主演のクラウス・キンスキーに猛烈に惹かれた。またトモコが大のクラウス・キンスキ−ファンで、そのトモコに連れられて、キンスキーが自ら監督までしたパガニーニの映画(題名を失念した)など、クラウス・キンスキーの出ている映画を何本か観るうちに、私もキンスキーファンになってしまった。そうなるとヘルツォークの映画、『アギーレ』や『フィッツカラルド』が観たくなってくる。しかしビデオは廃盤になるし、上映はしないしで観られない。しっかり観ているトモコは自慢をする。

 さらに 10 年以上、蓮實や四方田の文章に付き合っているうちに、最初の頃の呪縛も解け、彼等と自分との違いも分かるようになってきた。いくら蓮實が後期ヴィスコンティを貶そうと、面白いものは面白いんだよ! まあ、蓮實にはこの面白さは分かるまい。ってな感じで、同様にヘルツォークもきっと面白いに違いないのだ。この機会を逃してなるものか!

 で、『コブラ・ヴェルデ』ですが、この映画はヘルツォークとクラウス・キンスキーが最後に組んだ映画である。1987 年製作。キンスキーが死んだのが 1991 年だから、キンスキー晩年の作品といえる。それでだからか、この映画のキンスキーはいささかおとなしい。勿論あのキンスキーにしては、という意味だが。とはいえ、十分楽しめる、素晴らしい作品だった。アフリカの食人族の王国に単身のりこむ奴隷商人キンスキー。土人達が恐れる聖なる蛇を、「オレも故郷では蛇と呼ばれた男だ!!!」と絶叫して蹴っ飛ばし、剣を振り上げて王宮に突撃するキンスキー。最高です。

 ショウヘイくんは明日も観にいくそうだが、さすがに私は仕事に出なくてはならないので、無理。が、引き続きみなみ会館に場所を移して 9 日からレイトショーでヘルツォーク特集は行われる。それは観にいきます!

小川顕太郎 Original:2001-May-8;