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 Diary 2001・6月6日(WED.)

陽炎座

 みなみ会館に『陽炎座』を観に行く。『陽炎座』は、高校生の時に可能涼介に連れられて観に行った。どこやらのポルノ映画館で行われていた鈴木清順特集中の 1 本で、確か 3 本立て、他の 2 本は『殺しの烙印』『カポネ大いに泣く』だったと記憶する。初めて観た清順映画だったためか、その時の印象は「面白いが訳が分からない」というもの。なんとか自分の中で説明をつけたく思ったのを覚えている。その後、清順の他の映画を色々と観て、『殺しの烙印』なんて 2 回も見直して、自分のなかに清順映画をそれなりに位置付けたのだが、この『陽炎座』はそれ以来観ていなくて、記憶もかなり曖昧になってきていたので、この機会に観なおそうと思ったのだ。

 再見した感想は、明快だ、というもの。明快というと誤解されるかもしれないが、とてもよく腑におちた、とでも云おうか。そのぶん、この映画の凄さが初めて分かったような気がした。どういう所が凄いかというと、情緒、というよりむしろ映画的快感さえも意図的に切断しまくり、凄まじくスタイリッシュな「映画的な映画」に仕上げている所だ。ラスト近くの陽炎座(?)崩壊のシーンのカタルシスのなさ、それにも関わらずその美しさ。映画なんてものは、夢のような現世における、さらに銀幕に写された夢、意味もなく、意義もない、陽炎より儚いものなんだよ、という清順の声が聴こえてきそうだった。確かに。真面目に映画についてなんか書こうとしている自分が、とても阿呆に思えてきますね。

 原田芳雄が「梅干しや 集めて酸っぱし 最上川」と詠めば、女の子が「はーい」と言って自分の弁当の中から梅干しを探して箸でつかむ。さらに「松茸や ああ松茸や松茸や」と詠めば、女の子は自分の弁当の中に松茸が見つからぬので、原田芳雄の股間から松茸を見つけだして箸でつかむ。そこに松田優作が現れて「松茸や つわものどもが 夢のあと」と詠んで、「失礼」と去って行く…。ここで一句。

 カフェ戦争 負けるなオパール ここにあり

 失礼しました。

小川顕太郎 Original:2001-Jun-8;