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 Diary 2001・1月16日(TUE.)

精神の氷点

 店に行くと、カウンターにはっさくさんが居た。京都朝日シネマ*** を観てきたそうだ。4 時間以上ある映画で、休憩なしとのこと。とにかく疲れた、というのが感想のようだった。

 それはともかく、この映画、実は私と可能涼介の間で秘かに話題になっていた。何故なら、この映画で主演している二人の女性の相手役、という重要な役柄を演じている *** という男性、こいつがどうやら我々二人の知人らしいのだ。しかし、それだけなら別に話題にはならない。問題は、こやつ *** くんは、「平気で嘘をつく人」だったのだ!

 私が初めて彼と会った時、我々二人は予備校生だったのだが、彼は自分の事を埴谷雄高の弟子だと紹介した。現在執筆中の小説を、毎月埴谷雄高の所に送り、批評して貰っているのだ、と彼は語った。そして『死霊』と自分の小説の関係性について、得々と語りだしたのだが、『死霊』を未読どころか、まともに埴谷雄高の文章を読んだこともなかった私は、ただ圧倒されて話を聞くばかりだった。

 ところが、すでに『死霊』を読んでいた可能は、なんだか話がおかしいと思ったらしく、何年か後に、強引に彼を連れて埴谷雄高の下を訪れ、彼の言っていたことは全て嘘だった事を証明したのだ。とはいえ、その頃の私はすでに彼とは縁が切れていたのだが。

 私は直接に彼の嘘の被害にはあっていない。が、可能のほうは、彼の嘘に導かれて仕事を辞めてロンドンまで行き、そこで半年にわたって激しい闘いをしたようなので、恨みが骨髄に徹している。この映画に *** くんが出演していると聞きつけた可能は、「あいつがロンドン大学を卒業できる訳がない。現在どうしているか知りたい」と言って、私にもし分かるなら調べておいてくれと頼んだのだ。

 そこで私は、パンフレットかなにかないかと、はっさくさんに尋ねた。すると、パンフレットは買わなかったが、ファンらしき女の子が勝手に作って会場で配布していたフリーペーパーを貰ったということで、そいつを見せて貰うと、ちょろっとだけ *** くんについて書かれてあった。それによれば、現在は人類学の論文を書くために、パラオに居るそうだ。う〜ん、これは本当か、嘘か。


 大西巨人の『精神の氷点』みすず書房を読了する。処女長編という事だが、すでに大西巨人節が随所に響きわたり、初めからスタイルを持った作家であることを確認する。非常に面白く読めた。そういえば可能が雑誌「早稲田文学」の編集部に提案して、どうやら大西巨人特集を近々やりそうだ、とのこと。是非やってほしい。ついでに『神聖喜劇』も復刊してほしい。

 今日も寒い日だった。夜にはほとんど人通りもなし。帰り道が辛いね。

小川顕太郎 Original:2001-Jan-17;
2010年 3月 追記

この日記で話題にしてゐる男性(私の旧友)からメールが来ました。そこには強い不快感が表明してあり(当たり前か!)、私も約9年振りにこの日記を読み直してみて、若書きとはいへ些か不注意な点がある、彼が不快に思ふのも当然だ。と、反省いたしましたので、ここにコメントを附すことにしました。
もちろん、私はこの日記でウソやデマを書いたつもりはありません。とはいへ、一方的に可能側からの情報(及び私の主観)で書かれてゐるのは事実で、著しく偏った立場からの見方である、といふのは事実です。この日記を読まれる方は、その点を十分に考慮してお読み下さい。
また、再度強調しておきますが、私自身は彼のウソに何度か振り回された事はありましたが、迷惑を受けた事はありません。当時から、彼のウソに振り回されたのは良い思ひ出でした。それなのに、そのニュアンスが十分に出てゐないのは、やはり不公平だと思ひますので、彼の名前及び映画名は伏せ字にしたいと思ひます。御了承下さい。