京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

HOME > diary > 01 > 0825
 Diary 2001・8月25日(SAT.)

青島要塞爆撃命令
ゼロ・ファイター大空戦

 みなみ会館に『青島要塞爆撃命令』(1963 年・古沢憲吾監督)と『ゼロ・ファイター大空戦』(1966 年・森谷司郎監督)の 2 本立てを観にいく。これがまたとてつもなく面白い 2 本立てだった。本日 1 日だけのプログラムだったのだが、今日他の映画を観にいってしまった人を心から哀れむ、そしてこのプログラムを観られた自分の幸せをしみじみと噛みしめる。それぐらい素晴らしい 2 本立てだった。

 まずは『青島要塞爆撃命令』。第一次大戦時の日本軍による青島のドイツ軍要塞攻撃を描いた作品。また日本空軍の草創期を描いた作品でもある。

 当時まだ飛行機は、戦闘において戦力とみなされていなかった。それも当たり前で、日本海軍航空隊はその当時、ツバメより遅くしか飛べないフランス製のモーリス・ファルマン 2 機しかなかったのだ…。それでも航空隊のメンバー達は、知恵と勇気を持って青島要塞を攻撃し、日本軍を勝利に導き、飛行機の意義を認めない海軍参謀達に対しても、自らの存在意義を認めさせる。その様子が、おおらかなユーモアと清々しい勇ましさで描かれる。

 涙あり、笑いあり、尊い犠牲と一途な思い、勇気、知略、スリルにアクション、飛行機に憧れ続けた円谷英二の素晴らしい特撮が花を添え、最後に大いなる感動に包まれる。これぞ娯楽映画だ!

 ちなみにこの映画は、RCS のサトウさんが 20 年以上も前に一度テレビで観て、そのあまりの面白さにいつか劇場にかけたいと思い続けた作品で、今回は念願の上映という事です。サトウさん偉い!

 次は『ゼロ・ファイター大空戦』。打って変わってこの映画は第二次世界大戦末期、戦闘の最前線であるブーゲンビルのブイン基地での零戦八生隊の活躍を描く。

 すでに日本軍の敗色は濃く、少ない物資を大和魂で補いつつ、決死の戦いを続ける八生隊。そこに戦死した隊長に代わって、新しい隊長(加山雄三)がやってくる。ところがこの新隊長は「大和魂では飛行機は飛ばん。無茶な攻撃はやめろ。命を粗末にするな。」という徹底的に合理的な考えを持った隊長であった。大和魂を前面に押し出した荒武者の部下や、「みごとに散れ! それが帝国軍人だ!」という参謀達は、新隊長のこの合理的な考えを、卑怯で臆病な態度としていっせいに反発するのだが、新隊長の圧倒的な技量と知力に、しぶしぶその実力を認めざるを得なくなっていく…。

 と、書けば、無茶な精神主義を振り回す日本軍に対する批判の映画、と思えるだろう。ところが、この映画はそんなに単純なものではない。西洋流の合理主義の裏には個人主義が貼り付いており、いっけん無茶に見える日本軍の大和魂にも、それ相応の必然性がある、という事が徐々に描かれる。我々は追いつめられていたのだ。合理主義も個人主義もよいだろう。しかし、殺られてしまっては、負けてしまっては、元も子もないではないか。我々には闘うしかないのだ…。

 監督の森谷司郎は黒澤明の愛弟子だという。黒澤は『トラ トラ トラ!』を監督する時に(後に降板したが)、「もう騙し討ちとは言わせない!」と言っていたらしいが、左翼崩れとはいえ、真っ当な愛国心を黒澤は持っていたという事が分かる。愛弟子の森谷にもそれはあったのか、愛国心に裏打ちされた傑作映画である。いまどき、ここまでの水準の映画を撮れる人間が、いったい日本に何人いるのだろう? と、疑問を呈したくなるくらい、素晴らしい映画でした。

 本日地震あり。本棚の上に積んでいた本がドサドサと落ちてきて、大変でしたー。

小川顕太郎 Original:2001-Aug-27;