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 Diary 2001・8月20日(MON.)

精神主義について

 お盆が終わった月曜日だからか、暇です。お客さんが来ないのを、ジッと待つのは辛いもので、忍耐力が必要です。日記に書くネタもないし。で、このあいだ観た傑作映画『ハワイ・マレー沖海戦』について、ちょっと書いてみます。

 この映画の前半は、予科練でビシビシ鍛えられる少年兵達の姿が描かれるのですが、その訓練の基本にあるのが精神主義です。精神主義というのは戦後評判が悪くて、日本軍は「やればできる!」「できないのは頑張りが足りないからだ!」という精神主義で、勝てもしない戦争を闘って、無惨にも負けた、という事になっています。しかし物事はそんなに単純な訳はない、と私は思っています。

 例えばこの映画で、ボートの試合があるのですが、それに負けた生徒達に対して、教官が「おまえ達が何故負けたか分かるか! 頑張りが足りなかったんだ、頑張りが!!」と叱咤する場面があります。ここだけ観ると、「頑張りだけで勝てるわけないだろうが。やっぱり精神主義は駄目だ」と思いがちですが、その後に、ラグビーの試合があります。そして生徒達はこの試合にも負けるのですが、今度は激賞されます。確かに試合には負けたけれども、相手はおまえ達よりずっと実力のあるチームだったので負けても仕方がない、しかしおまえ達は十分に頑張った、よくやった! と激賞されるのです。だから要するに、精神主義とは、出来もしないことを頑張ればできると強弁して無理を強要することではないのです。それは物事を頑張り通す、忍耐力を作るものなのです。

 忍耐力というのは、鍛えなければ、決して身に付きません。自分では絶対に無理だと思われることを、ガンガン怒られながら、やり通すことによってしか、身に付きません。そして、人間のもつ実力というものは、知力であれ体力であれ技術力であれ、このように常に自らの主観を越えた努力によってしか、伸びないものなのです。人間は自分に対しては甘いし、未熟なうちは自分の頑張り具合がどれほどなのか見極める力はありません。しかし、自分より上の者達には、その事が見えるのです。いくら自分では限界まで頑張っているつもりでも、上の者達から見れば、「ああ、こいつまだまだ自分を甘やかして、じゅうぶんに頑張っていないな」というのが、分かるものなのです。そこを指摘して、頑張るというのは実はどういうものなのか、を教えるのが、精神主義なのです。

 もちろん、精神主義にも短所はありますし、日本軍も大東亜戦争末期には、この精神主義の短所に蝕まれていったのは事実でしょう。が、戦後、精神主義が徹底的に嫌われ、「ゆとりの教育」なんぞという甘やかしの方向にズルズルと向かっている現在、精神主義の復権が必要なのではないでしょうか。そのためにも、まずこの傑作映画『ハワイ・マレー沖海戦』を、是非観てほしいと思います。DVD は出ているみたいです。

 うーん、それにしても、待つ身はつらい。

小川顕太郎 Original:2001-Aug-22;