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 Diary 2000・11月9日(THU.)

伊藤若冲展

 今日は間違えず京都国立博物館に行く。入り口の所に人が並んでいたので吃驚し、中に入って人の多さに暗澹たる気持ちになる。人を押し分けて展示物を見るなんて決してしたくない事のひとつだ。だから人気のある展覧会は嫌なんだ。と暗い気持ちを抱きつつ、それでも人をかきわけて、観る。

 幸いな事に、あまりの面白さ故すぐに人混みが気にならなくなった。私は昔から若冲が好きで、様々な企画展などで 1 点、2 点と若冲が展示されるたびに、それはほとんど鶏の絵ばかりだったのだけれど、「ジャクチュー、ジャクチュー」と騒いでいた。それがこのように大量の若冲を、それも若冲ばかりを観れるなんて、最高だ。バロックと言おうかマニエリスムと言おうか、この狂った感覚は素敵すぎて、私は思わず酒樽を 100 個ぐらい並べてそこいらに居る人々に振る舞いたくなった。もちろん私も致死量まで飲む。そして酒樽、というか酒の入ったタンクに生まれ変わってさらにみんなと差しつ差されつ。

 若冲と言えば、『動植綵絵』に代表される豪華絢爛な絵が有名だけれど、そして私もそういった絵は大好きなのだけれど、今日は水墨画にやられた。鹿苑寺大書院障壁画。襖 4 枚でひとつの絵になったものが、六つ。襖を次々と開けていけば、どんどん絵が観られるという構成に、鹿苑寺ではなっているそうだ。これは凄かった。それが展示してある部屋には、ほとんど人がいなかったという事もあるかもしれないが、私は猛烈に心を打たれた。かっこよすぎ。私は自分がこのような襖を部屋に使える程の金持ちでなかったのを、つくづく残念に思う。鹿苑寺ごと欲しい。欲しい、欲しい。手に入らないのであれば、いっそ燃やすか。そして私は「生きよう」と思うのだ。

 ババさんも言っていたが、展示画の説明文がいい。おかしい。やたらと大袈裟で、なにやらお話をブツ切りでされているかんじだ。唐突に「この絵をアウフヘーベンするとなになにという絵になる…」とか書かれてあって、吃驚する。なんだか変で、読んでいるだけで楽しくなってくる。

 かようにとても素晴らしい展覧会で大満足。帰りはブラブラ歩いているうちにプラッツ近鉄にまで来てしまったので、前から一度行きたいと考えていた旭屋書店に行く。京都で最大で一番よく本が揃っていると評判だったからだ。確かに、ありました。前から探していた本がゾロゾロと。思わず 10 冊ほど買う。ははあっはは。アホですな。読む暇もないくせに。あーあ。

小川顕太郎 Original:2000-Nov-10;