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 Diary 2000・3月26日(SUN.)

ダンス・ダンス・ダンス

 クラタニくんが来店。またしても興味深い話を聞かせて貰う。今回はクラタニくんが完全にノーザンソウルシーンに移行する前、モッズシーンに関わっていた頃の話だ。

 モッズシーンには blues dress という集団がいる。blues dress は自覚的に「モッドであること」を体現しようと日々精進を重ねている集団なのだが、彼(女)等は日本のモッズシーンを 3 段階に分けて考えているという。まず第一段階は、各個人が好きなようにモッズ像を想定し、好き勝手にモッドを気取っていた段階。第二段階は、なるべくオリジナルモッドに近づこうと、様々な研究と精進を重ねた段階。そして第三段階は、それらを踏まえた上で模倣にとどまらない独自のスタイルを築き上げる段階、という事になるらしく、blues dress 自体は、この第三段階にいて精進を重ねているという事になるらしい。それでは具体的にはどのような活動をしているのだろうか。

「WHISKY A GO GO」という、東京モッズシーンが出来た頃から続くイベントを現在も続けているのもさることながら、何と言っても大きいのは「sir FACE」という雑誌を作り、無料で配布した事だろう。この雑誌には自分達のモッドに関する研究成果や考え、各地のモッズシーンの取材・報告などを中心に、日本のソウルシーンを代表する鈴木啓志や佐々木正三などの各氏による文章や、ケブ・ダージのインタビューまで掲載されている。気負った部分も多く、読んでいて恥ずかしくなったり爆笑してしまう事も多々あるが、そういうのも含めて非常にいい「フリーペーパー」だと思う。ここまでが前説で、ここからがクラタニくんの話。

 blues dress が、この「sir FACE」を通じてモッズシーンに与えた影響のひとつに、R & B で踊る、というのがある。それまでの日本のモッズシーンでは、SMALL FACES や THE WHO などのモッズグループ、THE JAM や SECRET AFFAIRなどのネオモッズ、ブリティッシュビートやモータウンなどが中心にながされ、R & B といっても 60 年代後期のサム & デイブやウィルソン・ピケットなどがせいぜい流されていたぐらいなのに、オリジナルモッズ達が聴いていたゴリゴリのアーリー R & B を流しはじめたのが blues dress だという。それにとどまらず、blues dress はその当時のダンスステップを研究し、自らの独創も加えて 30 種類以上のステップを編みだし、自分達もパーティーで踊るのみならず、「sir FACE」で紹介、本やビデオも作って売り、普及に努めたのだ。

 それが全国的に広まり、一時期のモッズシーンでは「R & B で踊る」というのが大ブームになったそうだ。クラタニくん達も必死で練習を重ね、当時のモッズパーティーでは、全員が一斉に同じステップを踏むという恐ろしい光景が繰り広げられたという。それが今ではそのブームもすっかり冷め、当時の熱に浮かされたブームの事を「人生最大の汚点」と言い切る人達もいるそうである。それでもクラタニくんは言う。「あの時代はレジェンドでした」。私も、そう、思う。

 クラタニくんの話があんまり面白いので、オパールが閉店した後も、「丼」という居酒屋に場所を移して話し続けた。なぜかオイシンもついてきたのだが、またしてもオイシンのあまりの無知ぶりに、いちいち話に説明を加えねばならず、焼酎の杯を重ねているうちに、私は居酒屋で眠りこんでしまった。

小川顕太郎 Original:2000-Mar-28;