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 Diary 2000・6月17日(SAT.)

数値

 雑誌『サイゾー』の M2 対談で、興味深い情報が載っていた。今回の対談のテーマは現在話題の「少年法」。なぜ「少年法」が現在話題かと言えば、17 歳の犯罪などに代表される形で少年犯罪の増加が問題になっているからだ。が、実はこの「少年犯罪の増加」というのが大嘘らしいのだ。

 少年による殺人の戦後のピークは 1965 年で、現在はその頃に較べればなんと 4 分の 1 に減っているという。強盗や強姦になるともっと減っていて、強姦なんて約 20 分の 1 らしい。つまり少年犯罪は 60 年代に較べると減っているのだ。しかし、そうと分かっている人は少ないのではないだろうか。みんなマスコミに煽られて、なんとなく少年犯罪は増加していると思っているのではないだろうか。少なくとも私はなんとなくそう思いこんでいたような気がする。深く考えた事はないが、なんとなくそういったイメージを前提に喋っていたような気がする。危ない、危ない。

 実はこういった話はよくあって、その昔「自殺が増加している」とマスコミで騒いでいた時に、確か「なだいなだ」だったと思うのだけれど、データを持ち出してきて、いや実は自殺は減っていると暴露した事があった。その時も私は軽いショックを受けたのを覚えている。だってあまりにも露骨な嘘ではないか。まあ、マスコミもわざと嘘をついた訳ではなく、よく調べずに思いこみで間違った情報を流していたのだろうが、それでも私の記憶では世間は間違ったイメージで一色に染められていたので、その罪は重いと思う。要するにマスコミというのは、常に世の中が悪くなっていると言いたがるものなのだ。よっく肝に命じておこう、と思っていたはずなのに、またしても今回やられてしまった。危ない危ない。

 ついでにもうひとつ。現在は「お受験」という言葉が流行になったりするぐらいだし、「受験戦争が激化している」とみんなは思いこんでいるのではないだろうか。マスコミも常にそう煽っているし。しかし、これも相当に怪しい説なのだ。もちろん、これは少年犯罪の件数や自殺の数などと違って数値化できないので、簡単に判断を下すのは難しい問題なのだけれど、例えば和田秀樹の本などを読むと、「受験戦争の激化」などと軽々しく言うことは出来なくなる。

 和田秀樹によると、受験戦争のピークは 70 年代前半で、それ以降は緩和しているという。和田はそう考えるいくつかの理由をあげているが、一番面白かったのは、彼の専門である精神医学的な観点からのもので、70 年代の後半から大学生の 5 月病がなくなっているという理由だ。5 月病は、ベトナム帰りの兵士と同じ症状が起こるものであり、つまりは激しい闘いからいきなり解放された事から起こる病気の事だ。眠れなくなったり、食べれなくなったりする。昔の大学生は 5 月になればこういった症状を起こす人がたくさんいたのだが、70 年代の後半からめっきりいなくなったという。代わりに出てきたのが「スチューデント・アパシー」という病気。慢性のスランプ状態に落ち込むもの。これは受験というものを戦後すぐに廃してしまったアメリカの大学生の間でよくみられる病気だそうだ。ということは、ううむ、受験戦争は緩和しているのか。

 詳しい事が知りたい人は、和田秀樹の『受験勉強は子どもを救う』(河出書房新社)を。この本は面白いです。

小川顕太郎 Original:2000-Jun-19;