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 Diary 2000・12月4日(MON.)

タイタス

 美松劇場で『タイタス』を観る。この映画は予告編がとても格好良くて、凄い映画かもしれん! 絶対観に行くぞ!! と、公開前から楽しみにしていたものだ。

 シェイクスピア原作の古代ローマが舞台の話なのに、何故か冒頭は現代らしき時代のキッチンで子供が遊んでいるシーンから始まる。爆音とともに現れたローマ兵によって子供が外に連れ出されると、そこは古代ローマの円形球技場だった、という趣向。パゾリーニの『アポロンの地獄』のつもりか、と早速脱力する。が、すぐにゴート族を倒したローマ兵達がタイタスに率いられて凱旋してき、これがまたみんな揃って奇妙かつ格好良い振り付けをしながらやってくるので、気を取り直す。しかしそれもまた束の間だった。

 とにかく格好良いシーンと頭を抱えるいたいシーンが入れ替わり立ち替わりやってきて、萎えたり起ったり、なかなか飽きさせない。ストーリーは流石シェイクスピア、と感心させるもの。映画のポスターには「復讐に燃える女の前に、男達はひれ伏すのみ」とかなんとか書いてあったが、ポスターに書いてあるのは嘘ばっかり、という最近の映画の傾向通り、そんな話では全くなく、復讐が復讐を呼ぶ復讐合戦の話。法律や国家というものが、時としていかに個人に対立するものか、という事が残酷なまでに描かれている。

 クソ映画『ベルベット・ゴールドマイン』で、デビット・ボウイにあたると思われる役をやったジョナサンなんとかとかいう若者が、バカ王子の役で出ており、黒人奴隷のアーロンに殴られたりして「おお! ソウル! ファンキー!」とか叫びながら観る。いかにもダメな白人の若者 VS 黒いジャガー、といった感じで、シェイクスピアは 20 世紀文化の問題まで射程にいれていたのか、と妄想にかられて感心したりする。

 結論としては、面白く観れた、とはいうものの、予告編にはるかに及ばない本編というのもどうか、といささか脱力気味。演出のための演出、とでもいうべき下手に過剰な演出が痛い。ババさんがレビューで書いていた通り、底抜け超大作あるいは珍品、というのが妥当な評だろう。

 店は暇。時間が長く感ぜられました。

小川顕太郎 Original:2000-Dec-6;