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 Diary 2000・12月1日(FRI.)

ハーン

 マキさんが来店。「へるん」というお菓子をいただく。これは小泉八雲にちなんだお菓子らしく、外袋に八雲の顔の絵がついている。という事は、「へるん」というのは「ハーン」のことか、等と皆でワイワイ言いながらお菓子を頬張っていると、オイシンが横から出てきて、「ハーン? チンギス・ハーンですか?」と問いかける。アホか、と思いながら「ラフカディオ・ハーンやろが」と答えると、「らふかでお? 誰ですか、それ?」と言う。

 久しぶりに出たな、オイシンの大穴。毎日顔を会わせているので、つい、普通に接してしまうが、オイシンの教養のなさは底抜けなのだった。つまりとても同じ人間として、他の人達と同列に扱うことはできない、ということだ。

 ところでオイシン、小泉八雲、という名前は聞いたことがあるか? 「もちろん知ってますよ。作家でしょ」。ふむ。じゃあ教えるが、ラフカディオ・ハーンというのは小泉八雲が帰化する前の名前なんだよ。「へええ…でも変ですね。なんだか外人みたいな名前ですねえ」。え? ちょっと待てオイシン。オイシンは小泉八雲が日本で産まれたと思っているのか? 「……!!! えええ! 違うんですか!!!」オイシンはそう叫んで、口を楕円形に大きく開け、目を黒目だけにして鼻の下を伸ばし、両手をあげて背伸びをしながら凝固した。もう、そのアホポーズは見飽きたよ、オイシン。

 とりあえずハーンの『怪談』と『日本人の微笑』は読むこと。そうオイシンに厳命する。

 閉店後、ビルを出ると、河原町通り沿いに植えてある木々の葉っぱが綺麗にすべて刈り取られていた。おかげでいつもなら五月蝿く飛び回る鳥の姿が見えない。あの大量の鳥はどこにいったのか。「あ、あそこにいますよ」とワダくんの指さす方向を見ると、木の上方にある電線に、何十羽という鳥が、みっしりとひしめき合って息をひそめて止まっていた。「うわ、こわ!」とオイシンが叫ぶ。鳥たちが、わずかに動いたような気がした。

 私とトモコは寝不足という事もあってヘトヘトだったので、タクシーに乗って家まで帰ることにする。ちょうどやってきた MK タクシーをつかまえ、自転車の鍵をはずしているオイシンに別れを告げ、車に乗り込む。出発と同時にふとオイシンの方をみると、そこには無数の鳥に囲まれ突っつかれて悶絶するオイシンの黒い影があった。

小川顕太郎 Original:2000-Dec-2;